トルコ中部、カイセリの旧市街。絨毯屋の主人は、私が店に入ってから三十分、絨毯の話を一切しなかった。
チャイが運ばれてきて、それを飲み干すと、また新しいチャイが注がれる。家族の話、日本の話、彼が若い頃に見たという雪山の話。三杯目を飲み終えた頃、彼はようやく奥から一枚の絨毯を持ってきた。
「これは私の母が織ったものだ」と彼は言った。ウールの艶が、電球の下でゆっくりと色を変える。茜色の縁取りは、この土地でしか採れない植物で染めたのだという。
値段は聞かなかった。聞くと、彼はしばらく黙って、それから「あなたが持って帰るなら」とだけ言った。
小説『君に聞かせる世界の話』第三巻・第七章に出てくる絨毯は、これのことだ。物語では少しだけ脚色したが、チャイが三杯だったことも、彼が値段を先に言わなかったことも、本当のことだ。
床に敷いてもいいし、壁に掛けてもいい。ただ、この絨毯には一人の母親の手の時間が織り込まれていることだけ、覚えておいてほしい。